犬の診療
犬のワクチンについて
<はじめに>
人も動物も、医療における知見は常に進歩していく中、科学的エビデンスや世界の状況変化に適切に応じていくことが求められます。
当院でも、皆様により一層安心・安全な獣医療を提供するため、ワクチンプログラムの見直しを行いました。
犬のワクチンで予防できる病気(2022年現在、日本で)
コアワクチン…世界中で感染が認められる重度の致死的な感染症から動物を防御するもの
・犬パルボウイルス(CPV-2)感染症
・犬ジステンパーウイルス(CDV)感染症
・犬伝染性肝炎(CAV-1)
・犬アデノウイルスII型(CAV-2)感染症
・狂犬病
ノンコアワクチン…地理的要因、その地域の環境、またはライフスタイルによって、特定の感染症のリスクが生じる動物にのみ必要なもの
・犬パラインフルエンザウイルス(CPiV)感染症
・犬レプトスピラ病
・ボルデテラ感染症
<ガイドラインをふまえ、当院の推奨するワクチンプログラム>
★子犬へのワクチン
・6~8週齢で初回接種、その後4週ごとに2回目、3回目を接種
(ショップでの初回接種が早かった場合、16週齢以降までもう1回追加接種)
・1歳齢で追加接種(免疫応答を高めるブースター)
★狂犬病ワクチン
・毎年1回の接種(法律で義務付けられています)
★成犬へのワクチン
・トリミングサロン、ドッグランなど、他の犬が集まる施設を利用する子、池や公園などを散歩する子、旅行に行く機会の多い子などは年に1回、ノンコアワクチンを含む混合ワクチンを接種。
(現状、国内で販売されている主なワクチンはノンコアワクチンとコアワクチンの混合ワクチンのため、散歩やトリミングに行くほとんどの犬が年に1回ワクチン接種をすることとなります。3年に1回、コアワクチンを含む混合ワクチンを打ち、レプトスピラのみのワクチンを毎年打ち、コアワクチンを打たない年は抗体価を測定することもできます。)
・ノンコアワクチンを必要としない子(お出かけをしない高齢犬や持病がある子)は3年に1回コアワクチンを接種、接種をしない年は抗体価測定をして、低値であれば接種。
ガイドラインでは不必要なワクチン接種を減らすことが推奨されていますが、ワクチンによる抗体価の上がり方や免疫の持続期間には個体差があるため、接種をしない年は抗体価測定をした上で接種の是非を判断することをおすすめします。 抗体価測定は血液検査なので、健康診断と一緒に受けるのもおすすめです。健康診断は1年に1回は受けることを推奨します。
🐶抗体価を測定して低値だった場合はさらにワクチン接種が必要なため、どうせ打つなら最初からワクチン接種で…という考え方もあると思います。ワクチンの副作用のリスク、病気の感染リスク、それぞれのリスクとベネフィットを考慮し、判断しましょう。
🐶ペットホテルやドッグランなどの施設によってはワクチン接種証明が必要な場合がありますので、事前にご確認ください。
🐶現状、日本で認可されているワクチンの種類には限りがあり、各々の病気のワクチンを一つずつ選んで接種することが難しい状況です。また流通の状況により、既存のワクチンも入手困難となる場合もあります。今後、より個々に合わせられるワクチンが出てくることが期待されます。
🐶1年に1回、健康診断を受けましょう。
ワクチン接種の有無に関わらず、1年に1回以上の健康診断をおすすめします。ワクチン抗体価測定の血液検査の際に、一緒に健康診断をすることもできます。
<さいごに>
テーラーメイド医療が求められる時代であり、ワクチンについてもそれぞれの環境やリスク、体調に合わせて個々に最適なものを選択するべきです。
そして、各々が予防をきちんとすることは、感染症の蔓延を防ぎ、地域の動物たちを守ることにつながります。地震や台風などの災害がいつ起きてもおかしくない近年、日頃から感染症対策をしておくことは重要であり、ワクチン接種は全員にとって大切なことです。
ガイドラインも最新の知見に応じて変化していきます。時代に則して最善の提案をできるよう、私たちも常にアンテナを張り対応してまいりますので、気になるところがございましたらご意見、ご相談ください。