犬の症例犬の診療腰がたたない
神経外科3とリハビリ科1 M.ダックスフンドの胸腰部椎間板ヘルニア
こんにちは、岡村です
ダックスフンドの飼い主さんにとって、椎間板ヘルニアはあまりにも有名です。
ちなみに我が家の「きみちゃん」もダックスフンドです。
どんな疾病であれ、いつもの元気でかわいい様子がみられないと心配になるものです
胸腰部に発生した椎間板ヘルニアでは重度になってくると、
下半身が麻痺して腰があがらなくなります
完全麻痺となる場合には、骨をつねっても痛くありません。
実際に後ろ足をひきずって歩く姿を見ると、様々な不安が頭をよぎります。
どうしよう、大丈夫だろうか、治るのかなどなど
治療は、内科治療と外科治療、そして治療後のリハビリに託されます。
病態は軽度から重度まで5段階にわけて評価され、
軽度評価であれば通常は内科が適応に、
腰がたたない重度評価の状態では外科治療が通常は推奨されますが、
その後の通院、投薬などのケアやリハビリ、管理方法、経済的負担を含めて
この疾患に、いずれの治療で望むのかを相談します
外科手術に移行する時には、たくさんある椎間板のうちどこでヘルニアが発生しているのかを確定しなくてはいけません。
当院では、麻酔下の脊髄造影X線検査を主に行います。
他にはCT, MRIなども適応です。
無菌的に造影剤を脊髄腔内に流します。
ヘルニアによる脊髄圧迫は造影ラインの消失で示され、
場所がきまれば、そのまま手術します
以前もブログで紹介しましたが、
外科手術選択の大きなメリットは、早期にリハビリを開始できること
そして長期の投薬管理をしなくてもよいことに代表されます。
術後すぐ、患部のアイシングで始まり、これは避妊手術でも用いられます。
まずは姿勢を保持することもとても大切です。
術後1~3日目にかけて起立姿勢がたいぶ保てるようになりました
動物専用の「バランスボール」みたいなフィットネス道具を用いて、
負荷をかけ、体のコアと後肢を鍛えていきます
これはいろんな種類があり、負荷の増減が可能なことが素晴らしい。
リハビリも動物が楽しんでできるよう工夫します。
報酬として1回分のフードを使って行ない、
獣医療先進国であるアメリカでも”Cookie Stretch”として用いられています。
これに興味がない子は楽しませることはなかなか難しい
幼少期からの食育は大切です。
パピークラスをはじめとするしつけ教室でも、フードに鼻先をつけてくる「マグネット」といわれる同様の原理を用いています。
実際にしつけ教室でこのフィットネス道具を使ってみると、さすがにパピーは飲み込みが早く、楽しんで乗ってくれ、有意義な運動が可能なんです。
けして、「おやつで釣っている」わけではありませんよ。
遊びの一環として取り入れることで、シニアでも、筋力低下予防につながることと思います
退院前にはしっかり歩けるようになりました
動物が受ける治療に楽しみというスパイスを加え、より効果的な結果を生み出すことができれば
こんなにも良い事はありません
獣医師として、確実な診断をし「良い」治療をする、
その過程では、動物には丁重なケアを行い、パピーからシニアまで治療も「楽しく」、「楽しく」生活の質を向上させる
そんな一面を持った病院でありたいと私もスタッフも思っています。