犬の症例犬の診療
腫瘍科2 犬の四肢の軟部組織肉腫
こんにちは、岡村です。
悪性の皮下腫瘍を切除する場合、辺縁を十分に切除することは
とても大切なことです。
体幹部は比較的容易にこれが可能です。
実家で離れて暮らすうちの子も若干5歳の時に、
肥満細胞腫という悪性腫瘍に罹患してしまいました
この腫瘍の進行による辛い闘病生活を目の当たりにしたことのある身として、
なんとかしてあげたい、
この腫瘍には大学病院での放射線治療や、外科治療、抗がん剤治療などが検討できますが、
取り残してなるものかと、完全切除を目指して、辺縁を広く、そして筋膜切除、
横にも下にも十分な切除を行いました。
肥満細胞腫は真ん中のしこりを中心に、蛸のような形で腫瘍細胞が存在するので、
たこ足を考慮し、大きめの辺縁と一緒に、葉形のラインで切除します。
結果、しこりの大きさに対してびっくりするくらいの大きな傷になります。
辺縁には腫瘍細胞はみられず、とりきれているが、脈管浸潤がみられるので注意必要との病理。
やはり、違う場所に2年後にしこりができました
それも拡大切除し、
もうすぐ9歳になりますが、元気に暴れて過ごしています
体幹に対して、四肢にできた悪性腫瘍は、とても辛いです。
もし、腫瘤の細胞診で軟部組織肉腫が疑われたならば、とてもショックです。
手足の腫瘍において、拡大手術は断脚になります。
放射線治療と外科治療の併用が推奨されつつありますが、
抗がん剤の明確な意義はまだ確立されていません。
しかし、様々な理由で、現実は放射線治療まで望まれない場合もあり、
外科治療単独になることが多いです。
腫瘤にできるだけ辺縁をつけて外科的に一塊で切除すると同時に生検に供し、
あるいはツルーカット生検を行い、
転移率の高いタイプの腫瘍では断脚なども考えます。
一次診療施設では、放射線治療のできる二次診療施設への紹介をするか、
ここまでの外科治療を相談することになるでしょう。
納得いかない場合は、腫瘍専門医の意見、プランをたずねてみられるのもよいでしょう。
いずれを選ばれるにせよ、腫瘍治療は特に
信頼できる先生がいることが大切だとボクは思います。
そして、納得いくプランで看ていくことをオススメします。
外科切除単独治療のケースをご紹介します。
写真のように大きなしこりが突然できちゃい、
腫瘤切除を選択されました。
ここで問題が。
大きなしこりを切除した場合、皮膚がよらないことは容易に想像できます。
このケースでは、腕の皮膚全周に対して、50%程度の皮膚切除が必要でしょう。
皮膚の欠損部に対しては、
皮膚移植や皮弁作成、スリットをいれて減張術などから選択し対応します。
今回はスリット形成減張術を行い、
きれいな肉が盛ってから、新鮮な皮膚が再生する方法をねらいました。
湿潤ドレッシング法によって包帯をし、術後1ヶ月半かかって、
まだ毛はまばらですが、きれいに皮膚が再生してくれました。
最初は病院が恐くて、ないてばかり。
だいぶん慣れてくれました通院よくがんばりましたね