動物看護師のつぶやき
バレンタインにハートの話
2月といえばバレンタインですね。さて、そんな時節にキュンとあまーい話題ではなく、心臓のお話です❤️ドキッ
心臓の病気には、心筋、弁膜、血管など異常の出る箇所によりいろいろな病態があります。猫で多いと言われている「肥大型心筋症」は、心室の筋肉が分厚くなってしまう病気です。筋肉が厚くなったらなんだか強そうな気がしますが、心室が拡がりにくく、スペースも狭くなってしまうので、血液を十分に送り出せなくなってしまいます。すると心房に血液がうっ滞して血の塊ができやすくなったり(血栓)、肺から染み出してしまったり(肺水腫)、深刻な病状を引き起こしてしまいます。
うっ血で心房が拡張した心臓は、逆三角形の特徴的な形でレントゲンに写り、「バレンタインハート」と呼ばれます。
普通のハートよりバレンタインのほうがハート感が強めってことでしょうか…そんなドキドキサプライズはいりません💔
肥大型心筋症は無症状で経過することもあり、急に後ろ足が立たなくなったり(動脈に血栓が詰まる)、突然死を起こしたりすることもあります。心臓検診で定期的にチェックをしたり、症状に応じて心臓への負担を減らす薬や血栓予防の薬などで治療していきます。
さて、猫では心筋症が多いというお話をしましたが、心臓の病気には「弁膜」の機能障害によるものもあります。
心臓では心房、心室、動脈の間にそれぞれ弁があり、それが開閉することで血液が一定方向に流れるようになっています。その弁が変性したり、弁を引っぱっている腱索が断裂したりすると、閉まりが悪くなり、血液が逆流してしまいます。
特に高齢の小型犬に多いのが「僧帽弁閉鎖不全症」です。
心臓はがんばって全身に血液を送り出そうとするのですが、逆流しちゃうのだから、十分な血液を送れません。それでも全身に酸素を送らなきゃいけないので心臓はバクバク必死に働き、ちょっとのお散歩でもはぁはぁ疲れやすくなります。そして逆流してくる血液で左房が拡張し、気管を圧迫するので咳が出ます。さらに肺から心臓へ入るはずの血液が滞って肺水腫を起こしたりします。
ところでこの僧帽弁、なんで「僧帽」弁ていうんだろうと素朴なギモン。
読んで字のごとく僧侶の帽子に形が似てるってことだろうけど、袈裟を着たお坊さんをイメージしてた私には想像がつかず…調べたところどうやらローマ教皇とかが被るミトラ(mitre)という冠が由来らしいです。僧帽弁は英語でmitral valve。日本語からイメージしたらダメですね。
ちなみにマッチョ好きが魅力を感じる首から肩への筋肉、「僧帽筋」はというと、カトリックの修道士の頭巾(フード)が由来だそうで、ミトラとは別物です。
心臓の病気は症状がみられない初期にも、健康診断時に心雑音の聴診で発見されることがあります。血圧をコントロールする薬で心臓の負荷を減らすなど、早期からの治療で病気の進行を遅らせることができる場合もあります。
その後も症状や進行ステージに応じて、利尿剤や強心剤の使用、食事管理などの治療が行われます。
動物でも人でも心臓病は死因の上位を占める病気です。先天性のものも加齢に伴うものもありますが、検査機器や治療法も進歩し、早期に診断し適切な管理をすることで、症状の緩和や長期生存を目指せるようになっています。
コロナ禍でおうち時間が増え、ペットを飼い始める人が急増しているとの話を最近よく聞きますが、ますます長寿高齢化が進む社会、今だけの感情や勢いではなく、この先20年はその子の命を預かるんだという覚悟を持ってお迎えしてほしいなと思います。そしてドキドキきゅんきゅん楽しいペットライフを送ってください😊
さて、バレンタインシーズンはペットがチョコレートを食べてしまう事故が起きやすいので、くれぐれもお気をつけくださいね💝
動物看護師 赤堀